今日はご縁あって、飛驒市で起業し、「サイクリングツーリズム」を主に外国人ツーリストに提供しておられる、株式会社美ら地球(ちゅらぼし)の山田拓社長のお話を伺う機会があった。
飛驒市 里山サイクリング事業(美ら地球 山田拓さん)
自分のFBにも書いたが、今年の夏に生まれて初めて飛騨高山を訪問し、外国人旅行者の多さ、そして他の地域と違い欧米人の比重の高さに驚いた。この山田さんは飛騨高山からさらに少し富山県よりに山奥にいった飛驒市の飛驒古川という場所で10年ほど前に起業した。外資系経営コンサルを辞め、夫婦で世界を2年旅して、たまたまご縁で飛驒に住むことになった山田さんは、最初は起業でなくどこか勤められる職場はないかと考えたそうだがそれは難しく、世の中よりだいぶ早く個性的なインバウンドツーリズムの会社を立ち上げたそうだ。
ここでやっている里山サイクリングは、決して何か特別なものを見るわけではなく、素朴な田園風景や、小学生の集団通学とか、地方の日本人にとってはありふれた山や川の景色を眺めたりというものなのだが、Tripadvisor等の満足度は非常に高いらしい。
山田さんの素晴らしいところは、県や市の自治体としっかり連携し地域からのサポートを得つつ、独自で特色のあるウェブサイトを作ったり、最初の電話1本目からきめ細かいフォローをする英語力&サービス精神のあるスタッフを少しづづ増やしていくともに、何より自らどんどん海外出張し営業を欠かさないという攻めの姿勢にあるのではと感じた。
日本全般でいえばやはり中国人観光客が圧倒的多数だが、この飛驒古川では、なんと豪州24%、米国17%、英国12%、シンガポール8%、以下フランス、カナダ、香港、オランダ、マレーシア、ニュージーランドなどが6−3%と、日本の他の場所に多い台湾中国韓国の依存度が極めて少ない(ちなみに飛驒高山は台湾からのお客さんが多いとのこと)。余談だが、そんな多様な旅行者がいるのに、地元の小学生は外国人=アメリカ人だと思い込んでる子が多いらしい(笑)
曰く、来てくれるお客さんトコトン満足してもらうサービスを提供する、そして、この地に来て喜んでくれそうな人に来てもらうためのマーケティングをする、というところにWebデザインから、ツアーの中身から何から、工夫をこらしているとのこと。
お酒やのし紙のラベルを書いたりとか、カエルが枝に止まってるところを写真にとったりとか、地元の農家と車座で交流したりとか、本当に何気ないものが満足度につながっているらしい。
最初は奇異な目で見ていた地元の人たちも、実際に観光客が増え、結果地域が潤うようになるなかで、山田さんに一升瓶を持ってきてくれたりとか、いい流れが増えてきているそうだ。お酒はともかくとして、いわゆるヒト、モノ、カネという経営資源のなかで、モノは地域で現地調達できる部分が多く、カネもさまざまな公的なサポートをうまくやれば得られるなか、人材の確保が一番の課題とのこと。
英語が出来、能動的に課題を解決し、コミュニケーションが柔軟な人材を地域で確保するのは本当に困難。ただ、最初夫婦で始めて、10人くらいのチームになると、やはりエネルギーの合力でとてもパワーが出るし、まだまだ伸びしろを感じている、との強い言葉があった。
全ての地域でこういうことが可能ではないだろうが、日本の地方の少なくない割合にはこういった潜在能力があること、能力と意欲のある人材が中長期取り組むことによって開ける可能性がたくさんあることを感じた会合だった。
一点だけ疑問に感じたこと。
飛驒は地理的にも歴史的にも文化的にも、岐阜市を中心とした美濃よりもはるかに富山・北陸との結びつきが強い。確かに行政的には岐阜県のもとにある高山市、飛驒市ではあるが、インバウンド観光や移住促進についてはもっと広域連携で県境を越えたアプローチが求められるのではないだろうか。北陸新幹線開通後、さらにその度合いが強まっていると思う。
今日は別用があり途中で失礼したが、山田さんのお話は本当に説得力があり面白かった。飛驒、地方、海外と激しく活動されているそうだが、今月2015年12月20日(日曜)にまた東京でトークセッションがあるらしいので、行ってみようかなーと思う。